税理士コラム
令和5事務年度の相続税の調査状況
- 投稿日:2025年03月17日
国税庁はこのほど令和5事務年度(令和5年7月〜令和6年6月)の相続税の調査の状況を公表しました。
8,556件(対前事務年度比104.4%)の実地調査を行い、このうち申告漏れ等の非違件数があったものは7,200件(同102.3%)で、追徴税額は735億円(同109.8%)となり、いずれも前事務年度から増加しています。
また、無申告事案については、690件(前事務年度比97.9%)の実地調査を行い、申告漏れ課税価格は752億円(同101.5%)、追徴税額は123億円(同111.4%)、1件当たりの追徴税額は1,787万円(同113.8%)となりました。
実地調査件数は前事務年度より2.1%減少したものの、申告漏れ課税価格、追徴税額とも増加しています。
特に追徴税額は、公表を開始した平成21事務年度以降では最高となっています。
同庁では、資料情報の収集・活用などを通じ無申告事案の把握のための取組を積極的に行い、的確な課税に努めるとしています。
海外取引や海外資産の保有状況の把握
そのほか、同庁では納税者の資産運用の国際化に対応し、CRS情報(共通報告基準に基づく非居住者金融口座情報)をはじめとした租税条約等に基づく情報交換制度などを効果的に活用し、海外取引や海外資産の保有状況の把握も進めています。
その結果、海外資産関連事案に対する実地調査件数は947件で前事務年度比112.1%と増加しています。
また、実地調査を実施する一方、「簡易な接触」も積極的に行なっており、件数については前事務年度から25.2%増えて1万8,781件でした。
申告漏れ等の非違件数は5,079件(対前事務年度比137.8%)、申告漏れ課税価格は954億円(同139.0%)、追徴税額は122億円(同140.8%)と、いずれも簡易な接触に係る事績の公表を始めた平成28事務年度以降で最高です。
同庁ではこの手法も効果的・効率的に活用し、適正・公平な課税の確保に努めていくとしています。
簡易な接触
原則として納税者宅等に訪問することなく、文書、電話による連絡または来署依頼による面接を行い、計算誤り等がある申告内容を是正するものです。納税者に対しては自発的な申告内容の見直しなどが要請されます。
所得税、法人税、消費税でも行われていて、所得税は約55 万8,000件(申告漏れ所得金額4,448 億円)、法人税は7万件(同92億円)、の簡易な接触を行っています(令和5事務年度等)。
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相続開始前7年以内贈与、課税価格への加算対象贈与財産価額に留意!
- 投稿日:2025年01月08日
2023年度税制改正で、相続税・贈与税について資産移転の時期の選択に対する中立性を高めるため、相続税の課税価格に加算される暦年課税による贈与の対象期間(「加算対象期間」)が相続の開始前3年以内から相続の開始前7年以内に延長されたのは記憶に新しいかと思います。
その際、過去に受けた贈与の記録・管理に係る事務負担を軽減する観点から、改正により延長された期間(相続の開始前3年超7年以内)に贈与を受けた財産の価額については、総額100万円まで相続税の課税価格に加算されないこととされました。
相続税の課税価格に加算される贈与により取得した財産の価額として、相続税の課税価格に加算される加算対象贈与財産の価額は、その財産の下記に掲げる区分に応じ、それぞれ次に定める金額となることに留意するとしました。
区分は、
(1)加算対象贈与財産のうち相続の開始前3年以内に取得した財産は、その財産に係る贈与の時における価額
(2)加算対象贈与財産のうち相続の開始前3年以内に取得した財産以外の財産は、その財産に係る贈与の時における価額の合計額から100万円を控除した残額
となっています。
なお、(2)の区分においては、相続または遺贈により財産を取得した者ごとに100万円が控除されるものであることから、その価額の合計額が100万円以下である場合には、相続税の課税価格に加算される金額はない(残額は零となる)ことに留意するとしました。
その他の留意点
本改正は2024年1月1日以後に贈与により取得した財産に係る相続税について適用されることから、相続または遺贈により財産を取得した日が2024年1月1日から2030年12月31日までの期間にある場合においては、加算対象期間及び相続開始前3年以内に取得した財産以外の財産に係る期間(100万円控除が適用される期間)は財産の取得時期に応じて、それぞれ異なりますので、留意する必要があります。
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