税理士コラム
相続税の課税割合は9.9%、過去最高に
- 投稿日:2025年10月09日
国税庁がこのほど公表した令和5年分の相続税の申告事績の概要によりますと、同年分の被相続人数(死亡者数)は前年比100.4%の157万6,016人となりました。
このうち、相続税の申告書の提出に係る被相続人数は15万5,740人(前年比103.2%)でした。
これにより、被相続人数に占める相続税の申告書の提出に係る被相続人数の課税割合は9.9%となり、昭和42年分以降で過去最高となりました。
課税割合は平成27年に8%台になってからほぼ増加傾向が続いており、今回は10%に近い水準まで上昇しています。
また、相続税の課税価格の総額は21兆6,335億円(前年比104.6%)となり、これも昭和42年分以降で過去最高を更新しました。
申告税額の総額は3兆53億円で、前年の2兆7,989億円を7.4%上回りました。
被相続人一人当たりの課税価格は1億3,891万円、税額にして1,930万円となり、対前年比はそれぞれ101.3%、104.0%でした。
相続財産の内訳
相続財産別に見ますと、最も多いのが現金・預貯金等で7兆9,633億円(前年比104.4%)でした。
次いで土地が7兆1,425億円(同101.0%)、有価証券が3兆8,779億円(同108.6%)、
金地金を含むその他が2兆5,817億円(同103.8%)、家屋が1兆1,452億円(同103.2%)となっています。
相続財産の構成比を見ますと、令和3年分から現金・預貯金等が首位となっており、それまでの土地と入れ替わっています。
また、相続財産の金額ベースではすべての項目で増加しており、過去10年間で見ても最高となっています。
e-Taxの利用状況
令和5年度における相続税の申告のe-Tax利用件数は8.5万件で、前年度に比べて2.4万件(38.7%)増加しました。
e-Taxの利用率は37.1%となり、前年度に比べて7.6ポイント上昇しています。
国税庁では、相続税について令和6年度のe-Tax利用率の目標値を48%に設定し、今後もより一層の利用促進を図る方針です。
e-Tax
税務行政のデジタル化の一環として、あらゆる手続が税務署に行かずにできるように様々な国税の各種手続きをインターネット等により手続が行えるシステムで、国税庁が開発し平成16年から運用を開始しています。
所得税、相続税、贈与税、法人税、消費税などに係る申告や納税、法定調書の提出、各申請届出等が行えます。
対応のソフトで会計処理から納税まで電子処理できるとして、国税庁は利用促進の広報周知を図っています。
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税理士コラム
相続税の税務調査の推定要件
- 投稿日:2025年08月15日
相続税の税務調査は通常申告を終えて1~2年後に行われます。
税務調査が実施されると、申告漏れ等が指摘される非違割合は80%以上と言われ、実際に昨年発表された相続税の実地調査事績(令和4年度)でも申告誤りは約86%に上り、指摘された1件当たりの追徴税額は800万円を超えています。
相続税の税務調査の対象要件については国税局が公表しているわけではありませんが、いくつかのパターンを推測することはできます。
名義預金と贈与
まずは名義預金と贈与です。
家族間のお金の流れで、例えばパートの配偶者の預金残高が不自然に多額な場合などが例に挙げられます。
また、贈与された金銭について、それが適正に申告されている場合でも、その預金通帳が被相続人によって管理されていたとすれば、それは一種の名義預金と判断されて相続財産と見なされてしまうことがあるので、注意が必要です。
上場有価証券
次いで上場有価証券です。
上場株式等で相続人が配当金を受け取っている場合、その株式は本来なら被相続人の財産だったのではないかという視点から、証券会社等に照会がいくことがあるのです。
また、上場会社の重役、同族会社オーナー、医師、弁護士など相対的に所得が高い職種の場合、税務調査の確率は高くなります。特に上場会社の社長の相続で、税理士などが適正に申告している場合でも、慣例として実地調査をするようです。
これらの職種で財産が不自然に少ない場合には、当然のことながらその理由が徹底的に調べられます。
さらには、預金等の頻繫な出入り、評価が複雑な不動産や自社株等の財産なども焦点に上げられます。
相続税の基礎控除が大幅に引き下げられて、相続税大増税時代を迎えている中、申告誤りで多額な追徴課税を請求されるケースが増えています。
相続税の申告は慎重さが求められると共に、いざという時のために税務調査の眼の付け処を理解し、適切な対応を心掛けておきたいものです。
相続税の基礎控除額
相続税の基礎控除額は、3000万円+600万円×法定相続人の数になります。
相続税の課税遺産総額の計算は、相続人各人が実際に取得した遺産額に必要な加算分(生前贈与等)をプラスし、その額から差し引き分(債務等)をマイナスします。
これが各人の課税価格で、これを相続人全員の分、合算して正味の遺産総額が算出されます。
この正味の遺産総額から基礎控除額を差し引くと、課税される遺産の総額が算定されます。
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