税理士コラム
源泉所得税等の納付期限と納期の特例 要件に該当しなくなった場合に注意!
- 投稿日:2022年11月02日
源泉所得税等の納付期限と納期の特例は、原則毎月の源泉所得税の納税を、納期の特例の適用を受ければ年2回で済ませることができるのだから、メリットは大きい。
しかし、注意点も少なくない。それは、給与の支給人員が常時10人以上となり、源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなった場合は、「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」の提出が必要となることだ。この届出書を提出した場合には、その提出した日の属する納期の特例の期間から所得税法第216条に規定する納期の特例の承認の効力が失われる。なお、適用要件を満たしていても、任意に納期の特例の適用を取りやめることも可能である。
また、会社を設立したケースでは、設立後すみやかに「納期の特例の承認に関する申請書」を提出していたとしても、設立した月の給与に関する源泉所得税等について納期の特例を適用することができない。納期の特例の適用を受ける前の源泉所得税は、原則どおり、支払った月の翌月10日までに納税しなければならない。これを忘れると、期限までに源泉所得税を納めなかったとして、不納付加算税が課される可能性があるため、注意が必要だ。
この特例を受けるためには、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出することが必要だ。この納期の特例申請書の提出先は、給与等の支払を行う事務所などの所在地を所轄する税務署長となっている。また、この特例の対象となるのは、給与や退職金から源泉徴収をした所得税等と、税理士、弁護士、司法書士などの一定の報酬から源泉徴収をした所得税等に限られている。
なお、源泉所得税の納期の特例の適用を受けることができるのは、給与等の支払を受ける役員や従業員などの人数が常時 10 人未満である源泉徴収義務者だが、ここでの「常時」とは、平常の状態を指している。つまり、繁忙時期に臨時に雇用して人数が増える場合は、その人数を除いて判断することになる。
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財産管理として近年注目される「家族信託」メリットは多いが税金が発生するケースも
- 投稿日:2022年10月11日
近年、新しい財産管理や相続対策の方法として「家族信託」が注目されている。家族信託とは、「自分の財産を信頼できる家族に託し、代わって管理してもらう制度」のことをいう。
そのメリットとして、認知症になったときに財産管理をしてもらう認知症対策、相続のトラブルを防ぐ争族対策、遺言書や贈与では難しい柔軟な二次相続対策、判断力が低下したときの財産犯罪の防止策、事業承継対策への活用、などが挙げられる。
家族信託では委託者、受託者、受益者の3者が当事者となる。財産の所有者である委託者が遺言や信託契約によって受益者に財産の管理処分の権限を与え、最終的に受益者が財産からの収益を受け取れるようにする形が一般的だ。また、委託者自身が受益者となることも問題なく、実際にはこの形が多い。このようにメリットの多い家族信託だが、一方で税金が発生するケースもあるので理解しておくことが大切だ。
原則的な家族信託の形では、委託者・受託者・受益者の3者が当事者となるが、この場合、委託者から受益者に対して財産の移転が行われたものとみなされ、贈与税が課せられることになる。贈与税は相続税と異なり非課税部分が少ないため家族信託の対象とする財産の金額が大きい場合には多額の贈与税が発生してしまう可能性がある。対策としては、委託者の生前は「委託者=受益者」としておくことが考えられる。
また、委託者の死亡によって受益者としての地位が相続された場合(あるいは、委託者の死亡を条件として信託契約の効果が生ずるとした場合)には、受益者に対して相続税が課税される。家族信託は委託者の生前は贈与税の発生を避けるために「委託者=受益者」となっていることが多いのだが、委託者の死亡によって受益者がその親族などに変わった際には、その親族に対して相続税が発生することになる。
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