税理士コラム
確定申告不要のワンストップ特例制度とは
- 投稿日:2024年07月01日
ふるさと納税は、自身の選んだ自治体に対して寄附を行った場合に、寄附額のうち2000円を超える部分について、所得税及び個人住民税からそれぞれ控除が受けられる制度です。
ふるさと納税に係る控除額の計算は
(1)所得税は、「(ふるさと納税額-2000円)×所得税率(5%から45%)」が控除額(なお、所得控除の対象となる寄附金の額は、総所得金額等の40%が上限)
(2)個人住民税(基本分)は、「(ふるさと納税額-2000円)×10%」を税額控除
(3)個人住民税(特例分)は、「(ふるさと納税額-2000円)×(100%-10%(基本分)-所得税率(5%から45%))」が控除額
上記(1)及び(2)により控除できなかった額を、(3)により全額控除(所得割額の20%を限度)します。
なお、2013年分から2037年分の寄附については、所得税率は復興特別所得税を加算した率です。
ふるさと納税として寄附された金額について、控除を受けるためには、確定申告をする必要がありますが、2015年4月1日以後に都道府県・市区町村にふるさと納税を行った場合で、かつ、ふるさと納税以外の確定申告が不要な給与所得者については、1年間のふるさと納税の寄附先が5団体以内の場合に限り、ふるさと納税先団体に申請書を提出することにより確定申告をしなくても、この寄附金控除を受けることができます。
この制度を「ふるさと納税ワンストップ特例制度」といいます。
5団体を超える自治体にふるさと納税を行った人や、ふるさと納税の有無にかかわらず、確定申告をする人がふるさと納税について寄附金控除の適用を受けるためには、ふるさと納税の金額を寄附金控除額の計算に含めて確定申告をする必要があります。
また、ワンストップ特例の申請者が、誤って寄附金控除の適用を受けずに確定申告をした場合は、更正の請求により寄附金控除の適用を受けることができます。
寄附金控除の適用
ふるさと納税として寄附された金額について、確定申告で寄附金控除の適用を受ける場合には、確定申告書第二表の「寄附金控除に関する事項」の「寄附先の名称等」欄及び「寄附金」欄にふるさと納税先団体名及びふるさと納税として寄附された金額を記載するとともに、「住民税に関する事項」の「都道府県、市区町村への寄附(特例控除対象)」欄にふるさと納税として寄附された金額も必ず記載する必要があります。
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税理士コラム
株式の譲渡所得申告漏れに注意
- 投稿日:2024年05月22日
国税庁は、株式公開買い付け(TOB)の成立で上場廃止となった株式に関し、譲渡所得の申告漏れが目立つことから、注意を喚起しています。
TOB成立後、上場廃止となった株式をTOBによる買付者などに買い取られた場合に譲渡益が生じたときには、所得税の申告が必要になります。なお、「譲渡益」とは、譲渡代金(買取価額)から取得費等を差し引いて計算した利益をいいます。
TOBは近年、上場企業に対するM&Aの手法として一般化しています。
国税庁は、TOBの買付総額が高額なものもあり、上場廃止後の株式譲渡に係る申告漏れの増加が懸念されたことから、株式を買い取った企業から税務署に提出されている「株式等の譲渡の対価の支払調書」(法定調書)に基づき、サンプル的に調査等を実施したところ、申告が必要であるにもかかわらず、申告漏れとなっているケースが多数把握されたとのことです。
無申告で追徴税額3000万円超えも!?
国税庁によると、TOBに応じなかった株主379人を対象に抽出調査した結果、約半数にあたる199人から申告漏れが見つかり、その申告漏れ所得金額は4億7495万円、追徴税額は7258万円で、申告漏れ1件当たりの追徴税額は36万円でした。
申告漏れが把握された事例の中には、1億8216万円と2億円近い多額の譲渡益が生じていたにもかかわらず、無申告となっていたものが含まれており、追徴税額3151万円が課されていました。
申告漏れの原因は「管理口座移動」
この申告漏れの背景には、株式を管理する口座が変わることにあります。
投資家の多くは、上場株式との取引を対象とする「源泉徴収ありの特定口座」を使っており、同口座は証券会社が売買損益や税額を計算して口座から天引きするため、投資家は自分で確定申告する必要がありません。
しかし、TOB成立で上場廃止となった企業の株式は、投資家自らが売買損益や税額を計算する「一般口座」での取引となり、利益が生じれば申告する必要があるのです。
株式公開買付(TOB)
公開買付者が、不特定かつ多数の者に対して買付期間・買付価格・買付予定株数などの公告等を通じて、証券取引所を通さずにそれらの株券等を株主から直接買い付けることをいいます。
TOBにおける買付価格は、市場の取引株価よりも高く設定されることが一般的です。企業を買収する場合や合併・子会社化など企業再編の際、またはMBO(経営陣による買収)で非上場化する場合などの際に用いられます。
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