税理士コラム
ストック・オプション、新株予約権の限度額を年3600万円に引上げ
- 投稿日:2024年02月16日
ストック・オプション(S・O)とは、会社が自社または子会社の従業員、役員等に対して付与する自社株式を一定の期間内にあらかじめ定められた権利行使価格で購入することができる権利をいいます。
資金が限られるスタートアップにとって、ストック・オプションは、優秀な人材を集める有効な手段として期待されています。
2024年度税制改正においては、そのストック・オプション税制が拡充されます。
具体案
具体的には、新株予約権の行使に係る権利行使価額の限度額について、設立の日以後の期間が5年未満の株式会社が付与する新株予約権については、その限度額を年2400万円(現行:年1200万円)に引き上げ、一定の株式会社が付与する新株予約権については、その限度額を年3600万円(現行:年1200万円)に引き上げます。
上記の「一定の株式会社」とは、設立後5年以上20年未満の株式会社で、上場等後の期間が5年未満であるものをいいます。
適用対象となる要件の見直し
また、中小企業等経営強化法施行規則の改正を前提に、適用対象となる特定従事者に係る要件の見直しを行います。
まず、認定新規中小企業者等に係る要件のうち「新事業活動に係る投資及び指導を行うことを業とする者が新規中小企業者等の株式を最初に取得する時において、資本金の額が5億円未満かつ常時使用する従業員の数が900人以下の会社であること」との要件を廃止します。
社外高度人材に係る要件
次に、税制の適用対象となる社外高度人材に係る要件について、「3年以上の実務経験があること」との要件を、金融商品取引所に上場されている株式等の発行者である会社の役員については「1年以上の実務経験があること」とし、弁護士や会計士など国家資格を有する者、博士の学位を有する者及び高度専門職の在留資格をもって在留している者については廃止します。
これによって、幅広い人材が確保しやすくなるのです。
社外高度人材の範囲については
(1)教授及び准教授
(2)金融商品取引所に上場されている株式等の発行者である会社の重要な使用人として、1年以上の実務経験がある者
(3)金融商品取引所に上場されている株式等の発行者である会社以外の一定の会社の役員及び重要な使用人として、1年以上の実務経験がある者
などが加えられ、スタートアップにおける外部の優秀な人材・協力者を集めやすくします。
- カテゴリ:税理士コラム
税理士コラム
「タワマン節税」防止に新しい算定ルール
- 投稿日:2023年12月07日
国税庁は、マンションの相続税評価額について、市場価格との乖離の実態を踏まえた上で適正化を検討していた有識者会議の見直し案を公表しました。
この見直しの背景には、マンションの評価額が実勢価格の平均4割程度にとどまることから、その評価額の低さを利用したいわゆる「マンション節税」や「タワマン節税」が富裕層を中心に広がっていたことがあります。
そこで、相続税の新たな算定ルールを定め、その節税防止を狙います。
現行の相続等で取得した財産の時価
現行の相続等で取得した財産の時価(マンション(一室)の評価額)は、不動産鑑定価格や売却価格が通常不明であることから、建物(区分所有建物)の固定資産評価額と路線価等から計算した敷地(敷地利用権)の価額の合計額としています。
しかし、建物の市場価格は、建物の総階数やマンション一室の所在階、築年数が考慮されており、これらの反映が不十分だと、評価額が市場価格に比べて低くなるケースがあるのです。
また、マンション一室を所有するための敷地利用権は、共有持分で按分した面積に平米単価を乗じて評価されますが、この面積は一般的に高層マンションほどより細分化され狭小となるため、敷地持分が狭小なケースは立地条件の良好な場所でも、評価額が市場価格に比べて低くなります。
このように、建物の効用の反映や立地条件の反映が不十分なことが、マンションの相続税評価額と実勢価格の乖離の要因となっています。
見直し案
そこで、見直し案では、相続税評価額が市場価格と乖離する要因となっている
「築年数」
「総階数(総階数指数)」
「所在階」
「敷地持分狭小度」
の4つの指数に基づいて、評価額を補正する方向で通達の整備を行います。
具体的には、これら4指数に基づき統計的手法により乖離率を予測し、その結果、評価額が市場価格理論値の「60%」(一戸建ての評価の現状を踏まえたもの)に達しない場合は「60%」に達するまで評価額を補正することとします。
評価方法の見直しのイメージは、
(1)一戸建ての物件とのバランスも考慮して、相続税評価額が市場価格理論値の60%未満となっているもの(乖離率1.67倍を超えるもの)について、市場価格理論値の60%(乖離率1.67倍)になるよう評価額を補正
(2)評価水準60%~100%は補正しない(現行の相続税評価額×1.0)
(3)評価水準100%超のものは100%となるよう評価額を減額します
2024年1月からの適用を目指します。
- カテゴリ:税理士コラム