税理士コラム
貸宅地と貸家建付地
- 投稿日:2023年11月15日
賃貸アパートや賃貸マンションの敷地として利用している土地は、「貸家建付地」評価の対象となります。
貸家建付地に該当すれば、相続税評価額を減額できるため相続税を節税することが可能ですが、賃貸建物の敷地として利用している土地すべてが貸家建付地として評価できるわけではありません。
土地を他人へ貸している場合には「貸宅地」に該当しますが、貸宅地と貸家建付地では土地の評価額の計算方法が異なるので注意が必要です。
貸家建付地とは
貸家建付地とは、貸家の敷地の用に供されている宅地、すなわち、所有する土地に建築した家屋を他に貸し付けている場合の、その土地のことをいいます。
貸家建付地の価額は、
の算式で求めた金額により評価します。
この算式における「借地権割合」及び「借家権割合」は、地域により異なりますので、路線価図や評価倍率表により確認する必要があります。
また、「賃貸割合」とは、貸家の各独立部分がある場合に、その各独立部分の賃貸状況に基づいて、
により計算した割合をいいます。
この「各独立部分」とは、建物の構成部分である隔壁、扉、天井や床等によって他の部分と完全に遮断されている部分で、独立した出入口を有するなど独立して賃貸その他の用に供することができるものをいいます。
なお、継続的に賃貸されていたアパート等の各独立部分で、例えば、一定の事実関係(※1)から、アパート等の各独立部分の一部が課税時期(相続または遺贈の場合は被相続人の死亡の日、贈与の場合は贈与により財産を取得した日)において一時的に空室となっていたにすぎないと認められるものについては、課税時期においても賃貸されていたものとして差し支えないこととされています。
※1 一定の事実関係とは、
(1)各独立部分が課税時期前に継続的に賃貸されてきたものである
(2)賃借人の退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われ、空室の期間中、他の用途に供されていない
(3)空室の期間が、課税時期の前後の例えば1ヵ月程度であるなど、一時的な期間である
(4)課税時期後の賃貸が一時的なものではないこと
などで、これらのケースでは、課税時期においても賃貸されていたものとして認められます。
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所得30億円超の超富裕層に課税を強化
- 投稿日:2023年08月02日
2023年度税制改正の焦点の一つとして、いわゆる“1億円の壁”の是正がありました。
政府税制調査会の会合でも、総所得1億円を境に税負担率が下がる「1億円の壁」と呼ばれる問題の是正を求める声が相次ぎました。
通常、所得課税は累進税率を採っており、4千万円超の部分には最大45%(地方税と合わせて55%)の税率がかかる一方、金融所得は一律15.315%(地方税と合わせて20.315%)と、金融所得がどれだけ高くても負担税率は同じです。
所得税は累進税率なので、当然、所得が増えるにつれて負担率も上がるはずですが、実態は違います。
財務省によると、年間の総所得が250万円までの人の所得税の負担率は2.6%、500万円までは4.6%、1000万円までは10.6%とどんどん上がっていき、年間の総所得が1億円の人の負担率は27.9%に達しますが、ここがピークとなり、その先は所得が増えても負担率が下がるので「1億円の壁」と称されています。
この要因には、1億円を超える大きな収入は、株式売却益などから発生する割合が大きいことから、トータルでの納税額が低くなることにあります。
1億円を超えると税負担率が減少し始めるため、富裕層は株式売却益や上場株式からの配当に係る金融所得を増やそうとします。
申告納税者の税負担率は、所得1億円の人は約30%、100億円の人は約20%ですが、今の金融所得課税は“金持ち優遇”の制度になっているとの批判が根強かったのです。
そこで、金融所得課税を見直し、所得が30億円を超えるような富裕層に対し課税強化することになりました。合計所得金額から3.3億円を差し引いたうえで22.5%の税率をかけた金額で計算し、これが通常税額を上回る場合に差額を徴収します。
所得が30億円を超える200~300人が対象となる見込みで、所得50億円のケースでは2~3%負担が増えると想定しています。2025年から適用となります。
当初、
(1)総合課税に含めて給与などと合算して課税する
(2)利益に応じて金融所得の税率を変更する
などの方法が提案されていました。
しかし、金融所得の税率が20.315%から引き上げられると、資産形成のために投資している一般投資家が株式市場から離れてしまう懸念もあります。
結局、所得30億円を超える大富裕層への課税強化となりましたが、「1億円の壁」是正はならず、今後の議論の行方が注目されます。
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